営業秘密はきちんと管理できていますか?

最近,かっぱ寿司の不正競争防止法違反容疑の報道が耳目を集めています。ライバル社の営業秘密を不正に取得したというものです。

不正競争防止法の「営業秘密」とは

ここでの「営業秘密」とは不正競争防止法2条6項に定義されているもので,①秘密管理性,②有用性,③非公知性が要件とされています。そのような営業秘密を窃取,詐欺,強迫その他の不正の手段により取得する行為が不正競争行為として処罰の対象となります(同条1項4号)。もちろん,民事上の差止請求や損害賠償請求の対象ともなります。

ここで注意すべきは不正競争防止法の定める「営業秘密」に該当しなければ,これらの保護は受けられないということです。さきほど3つの要件があると述べましたが,最も問題になりやすいのが,秘密管理性です。経済産業省の「営業秘密管理指針」によれば,秘密管理性は「営業秘密保有企業の秘密管理意思…が,具体的状況に応じた経済合理的な秘密管理措置によって,従業員に明確に示され,結果として,従業員が当該秘密管理意思を容易に認識できる(換言すれば,認識可能性が確保される)必要がある」とされています。

具体的には,マル秘マークをつけたり,IDカードなどでの入退室管理をするなどの方法により秘密として管理していることを意味します。形式的にこのような措置をとっているだけでは駄目で,実質的な秘密管理がされていなければなりません。

営業秘密管理指針・秘密情報の保護ハンドブック

秘密管理のありかたについては,上述の経済産業省「営業秘密管理指針」が最低限の水準としてを指針として示しています(https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html 2022年10月7日最終閲覧)。自社の営業秘密の管理が心配な方は,まずここに書かれているような措置をとるのがよいでしょう。

さらなるプラスアルファの対策を示すものとして,経済産業省は「秘密情報の保護ハンドブック」を公表しています(URLは上記の営業秘密管理指針と同じ)。企業における営業秘密保護のベストプラクティスを示すものといえるでしょう。営業秘密はいったん漏洩してしまうと,元に戻すことはできません。私法上,事後的な救済は可能ですが,それだけでは十分ではないおそれが高いのです。企業のコアコンピタンスにかかわる情報についは,特に未然の漏洩防止策が必須です。

なお,秘密情報の保護ハンドブックは令和4年5月に改定されたばかりです。改訂ポイントは,不正競争防止法の2017年改正により導入された,限定提供データに関する記載や,個人情報保護法の2020年の改正等に関する記載などの追加のようです。既にご存じの方も,再度確認してみられるとよいかと思います。

万全な秘密管理

転職などによる人材の流動化やインターネットの発達により,重要な営業秘密が深刻な危険にさらされるようになっています。営業秘密の保護,特には,その管理について,万全を期したいものです。

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