原料価格等の高騰に対しての下請法での対応
我が国ではいわゆる下請けという形で製品の部品を外注するようなことが多くあります。ご存知のとおり,近時の世界情勢などから原料価格などが高騰しています。下請業者としてはこれを価格に転嫁できなければ経営に大きな支障が生じます。
下請法では,いわゆる買いたたきの規制があります。これに違反した場合には,勧告などを受けることがあります。下請事業者の立場としては,このような規制の存在を利用して,価格交渉をすることができます。
第4条1項5号(買いたたき)
下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。
これを受けた下請法運用基準では,買いたたきに該当するか否かは次のように判断するとされています。
買いたたきに該当するか否かは,下請代金の額の決定に当たり下請事業者と十分な協議が行われたかどうか等対価の決定方法,差別的であるかどうか等の決定内容,通常の対価と当該給付に支払われる対価との乖離状況及び当該給付に必要な原材料等の価格動向等を勘案して総合的に判断する。
下請法運用基準第4項目5(1)
もっとも,これだけではまだ分かりにくいので,下請法運用基準はさらに具体的な内容を示しています。いろいろなものがありますので,詳しくは,下請法運用基準をご参照ください。以下では2022年1月26日に改正された点をご紹介します。
ウ 労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について,価格の交渉の場において明示的に協議することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと。
エ 労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストが上昇したため,下請事業者が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず,価格転嫁をしない理由を書面,電子メール等で下請事業者に回答することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと。
下請法運用基準第4項目5(2)
ここではアンダーラインで示した箇所が注意すべき点です。改正された部分でもあります。一読すると,協議や回答をすれば価格据え置きが認められやすいようにも読めますが,逆に言えば,協議や回答がより重視されているともいえます。親事業者は明示的な協議をしなければならないし,説明を求められれば書面等での説明をしなければならないとも言えるのです。下請事業者としては,このような運用基準の記載なども踏まえて,親事業者に対して実質的な内容のある協議を求めていくことができるはずです。
参考文献など
- 公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」2022年1月26日改正(https://www.jftc.go.jp/shitauke/legislation/unyou.html,2022年6月9日最終閲覧)
- 村田恭介「近時の下請法規制の傾向と対策 ― ガイドライン改正,情報提供フォーム設置ほか」ビジネス法務Vol.22 No.7,16頁,16-17頁(2022)